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亜硝酸リチウムによる補修
2.亜硝酸リチウムによるASR抑制効果(ASR対策)
亜硝酸リチウムの成分である亜硝酸イオンとリチウムイオンのうち,ASRの抑制に寄与するのは「リチウムイオン」です.リチウムイオンによるASR抑制効果を説明するために,まずASRそのもののメカニズムを紹介します.
ASRを引き起こす反応性骨材.このような骨材中に含まれるシリカ鉱物(SiO2)と,コンクリート中の水酸化アルカリとの化学反応によって,骨材周囲にアルカリシリカゲルが生成されます.アルカリシリカゲルは強力な吸水膨張性をもっており,コンクリート外部からの水分供給により膨張します.このアルカリシリカゲルの膨張により,コンクリート内部に大きな膨張圧を発生させ,コンクリートにひび割れが発生します.これがASRによるコンクリートの劣化メカニズムです.
ASRの進行過程は,第1ステージ「骨材中のシリカ鉱物とコンクリート中のアルカリ金属との反応によってアルカリシリカゲル(Na2O・nSiO2)が形成される過程」と,第2ステージ「アルカリシリカゲル(Na2O・nSiO2)が水分を吸収して膨張する過程」に分離して考えることができます.これを化学式で表すと図-2のようになります.

図-2 ASRの進行過程
ASRの進行過程の反応機構をみると,十分な水,十分なアルカリ金属イオン,および骨材中の反応性シリカの存在,という3つの条件が揃ったときに,ASRによるコンクリートの劣化が生じるということが理解できます.換言すれば,これら3条件のうちいずれか1条件の成立を阻止することにより,ASRによるコンクリートの劣化を抑制することができると考えられます.
一般に,ASRによって劣化したコンクリート構造物の補修工法として,表面被覆工により外部からの水の供給を遮断する対策が多く採られてきました.図-1中の第2ステージに示されるゲルの吸水膨張を阻止することを目的としています.しかし,例えば橋台や擁壁などのように背面土砂側からの水の供給を遮断することが困難な場合もあり,条件によっては外部からの水の供給を完全に遮断することは難しい場合があります.
ここでリチウムイオンが登場します.図-2にて示したASRの進行過程のうち,リチウムイオンの存在下では第2ステージのアルカリシリカゲルの膨張が抑制されます.すなわち,アルカリシリカゲル(Na2O・nSiO2)にリチウムイオン(Li+)が供給されることによって,水に対する溶解性,吸湿性を持たないリチウムモノシリケート(Li2・SiO2)またはリチウムジシリケート(Li2・2SiO2)に置換され,アルカリシリカゲルが非膨張化されるのです.これらを反応式で表すと図-2のようになります.

図-2 リチウムイオンによるゲルの非膨張化
アルカリシリカゲルがリチウムイオンによって非膨張化されると,吸水膨張反応が収束するため,以後,コンクリートのひび割れは進行しなくなります.これがリチウムイオンによるASR抑制のメカニズムです.このメカニズムを模式図で示すと,図-3のようになります.
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